日本大学工学部建築学科 建築材料学研究室のウェブサイトです。

ポーラスコンクリートの性能評価

【ポーラスコンクリート】
鉄筋コンクリート構造物などに使用する普通コンクリートは緻密な組織でできています。それに比べて、ポーラスコンクリートは15~30%の連続した空隙を持っています。そのため、透水性舗装、吸音壁、緑化基盤、水質浄化などに利用することができます。しかし、ポーラスコンクリートは大きな連続空隙を持っているので、普通コンクリートよりも強度が低い欠点がありましたが、現在は、その強度改善が進んでおり、構造用途での利用も期待されています。

水質浄化用ポーラスコンクリート組織図

水質浄化用ポーラスコンクリートブロック

▲ロハスの家3号に設置した水質浄化用ポーラスコンクリートブロック
ポーラスコンクリートを通して水をくみ上げ、水を循環させて水質を維持しています。


【研究概要】

ポーラスコンクリートの調合設計法の確立

用途に応じた強度や空隙率を得る目的で、ポーラスコンクリートを製造する前に、使用する材料の種類やそれらの使用割合を合理的に決定する調合設計法の確立を目指しています。

セメント混和用ポリマーの混入、繊維補強などによる強度及び耐久性の改善

ポリマーの混入や繊維補強によって、強度及び耐久性を向上させる方法を見いだします。

ポーラスコンクリートの静弾性係数推定法の確立

使用する粗骨材(砕石)及び、結合材としてのセメントモルタルの性質と使用量から、ポーラスコンクリートの静弾性係数を推定する方法(推定式)を提案します。





ポリマーセメントモルタルの性能評価

【ポリマーセメントモルタル】
ポリマーセメントモルタルは、セメント、水、細骨材(砂)及びセメント混和用ポリマーを練混ぜて製造されます。セメント水和物と細骨材の隙間にポリマー連続相(プラスチックの薄膜)が作られるため、接着性がよく、水やガスなどの浸入を防いでモルタルの耐久性を向上させます。左官用モルタルとして、仕上塗材(しあげぬりざい)、タイル用接着材、床塗り材、塗膜防水材などに、又、鉄筋コンクリート構造物の断面修復材料として広く使われています。

【研究概要】

ポリマーセメントモルタルの各種試験法の検討

ポリマーの混入や繊維補強によって、強度及び耐久性を向上させる方法を見いだします。 現在、ポリマーセメントモルタルのJIS(日本工業規格)として、JIS A 1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)とJIS A 6203(セメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂)が制定されています。本研究室は1970年代からこれらのJIS制定に携わっているため、試験方法を含む様々な性能評価の方法について研究を継続しています。


ポリマーセメントモルタルの新しい調合因子の確立

ポリマーセメントモルタルは、セメント水和物、砂及びポリマーの連続相から成る3相系複合材料であり、その性質は、使用材料の性質とそれらの体積の割合で表すことができ、このことを複合則といいます。複合則を適用することによって、ポリマーセメントモルタルを製造する前に、使用する材料の種類やそれらの使用割合から、出来上がった時の性質を知ることができる新しい指標を検討します。



自然環境下におけるポリマーセメントモルタルの評価試験

▲自然環境下におけるポリマーセメントモルタルの評価試験

自然環境下におけるコンクリート系材料の耐久性評価

【屋外暴露試験】




コンクリート系材料の耐久性を評価するには、屋内での試験装置を用いる方法がありますが、長期間にわたって屋外の自然環境下に試験体を置いて性能の変化を観察しています。これを屋外暴露試験といい、本研究室では、北海道、三宅島の暴露試験場での試験を実施しています。

【研究概要】
・ポーラスコンクリートの耐久性評価
・鉄筋コンクリート構造物用断面修復工法の開発と性能評価




耐久性改善策を施したポーラスコンクリートや、鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋腐食を抑制する断面修復工法を適用し、鉄筋コンクリート構造物の補修箇所を模擬した試験体を屋外暴露して、それらの性能を評価します。




●高耐久性塗料の性能評価
●産業廃棄物の建設材料としての有効利用

これらの研究は、外部機関との共同で行っています。

最近発表した審査論文・科学研究費補助金

-ポーラスコンクリートの性能評価-

【発表論文】
1) 武田昌也,齋藤俊克,出村克宣,「普通コンクリートの各種静弾性係数推定式のポーラスコンクリートへの適用」,コンクリート工学年次論文集,Vol.41,No.1,June 2019,pp. 1445-1450.
2) 齋藤俊克,出村克宣,「ポーラスコンクリートの空隙率及び圧縮強度に及ぼす型枠のせき板効果の影響」,セメント・コンクリート論文集,Vol.70,March 2017,pp.290-296.
3) 齋藤俊克,出村克宣,「複合則を適用したポーラスコンクリートの静弾性係数推定式の提案」,日本建築学会構造系論文集,Vol.81,No.723,May 2016,pp.825-832.
4) 齋藤俊克,出村克宣,「ポーラスコンクリートの圧縮強度,静弾性係数及び動弾性係数の関係」,セメント・コンクリート論文集,Vol.69,March 2016,pp.251-256.
5) 齋藤俊克,出村克宣,十文字拓也,「ビニロン短繊維及び微細繊維を併用した繊維補強ポーラスコンクリートの機械的性質」,日本建築学会構造系論文集,Vol.79,No.702,Aug. 2014,pp.1081-1088.

【科学研究費補助金】
1)科学研究費補助金(若手研究B),(H23~24年度),研究代表者:齋藤俊克,研究課題名:高曲げ強度を有するハイブリッド型繊維補強ポーラスコンクリートの開発(課題番号:23760532)
2)科学研究費助成事業(若手研究B),(H25~27年度),研究代表者:齋藤俊克,研究課題名:ハイブリッド型繊維補強によるポーラスコンクリートの耐久性の改善(課題番号:25820272)
3)科学研究費助成事業(基盤研究C),(H28~30年度),研究代表者:齋藤俊克,研究課題名:性能設計を可能とする複合則を適用したポーラスコンクリートの静弾性係数推定法の構築(課題番号:16K06589)
4)科学研究費助成事業(基盤研究C),(R1~3年度),研究代表者:齋藤俊克,研究課題名:広範な空隙率を持つ性能設計対応型ポーラスコンクリートの静弾性係数推定法の提案(課題番号:19K04694)


-ポリマーセメントモルタルの性能評価-

【発表論文】
1) 西田 電,齋藤俊克,出村克宣,我喜屋宗満,「ポリマーセメントモルタルの曲げ及び圧縮強さに及ぼすポリマー混入率の検討」,セメント・コンクリート論文集,No.72, ,Mar. 2019,pp.99-105.
2) 西田 電,齋藤俊克,出村克宣,掛川 勝,「ポリマーセメントモルタルの接着強さに及ぼす下地の種類及び養生条件の影響」,コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集,Vol.l8,Oct. 2018,pp.707-710.
3) 西田 電,齋藤俊克,出村克宣,掛川 勝,「試験時の応力増加速度並びに供試体形状および寸法がポリマーセメントモルタルの圧縮強さに及ぼす影響」,コンクリート工学年次論文集,Vol.40,No.1,June 2018,pp.357-362.
4) 岡田明也,我喜屋宗満,齋藤俊克,出村克宣,掛川 勝,「低固形分を有するセメント混和用ポリマーディスパージョンの貯蔵安定性」,コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集,Vol.l7,Oct. 2017,pp.363-366.
5) 西田 電,我喜屋宗満,齋藤俊克,出村克宣,掛川 勝,「ポリマーセメントモルタルの圧縮強さに及ぼす供試体形状及び荷重速度の影響」,コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集,Vol.l7,Oct. 2017,pp.197-200.
6) 西田 電,我喜屋宗満,齋藤俊克,出村克宣,「竹補強ポリマーセメントモルタルの機械的性質におよぼす養生方法の影響」,コンクリート工学年次論文集,Vol.39,No.1,June 2017,pp.1519-1524.
7)我喜屋宗満,齋藤俊克,出村克宣,掛川 勝,「供試体製造時の練混ぜ容量の違いがポリマーセメントモルタルの耐久性能評価に及ぼす影響」,コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集,Vol.l6,Oct. 2016,pp.97-100.
8) 我喜屋宗満,齋藤俊克,出村克宣,「単位ポリマー量がポリマーセメントモルタルの吸水および強さ性状におよぼす影響」,コンクリート工学年次論文集,Vol.38,No.1,June 2016,pp.1521-1526.
9) 我喜屋宗満,齋藤俊克,出村克宣,「竹補強ポリマーセメントモルタルの曲げ性状」,コンクリート工学年次論文集,Vol.37,No.1,June 2015,pp.1363-1368.
10) 八木将太郎,齋藤俊克,出村克宣,「石灰岩砕砂を用いたポリマーセメントモルタルの基礎的性質」,コンクリート工学年次論文集,Vol.36,No.1,June 2014,pp.1516-1521.


-自然環境下におけるコンクリート系材料の耐久性評価-

【発表論文】
1) 岡田明也,渡辺宗幸,齋藤俊克,出村克宣,「RC構造物の断面修復部を模擬した供試体の屋外暴露試験による防せい性混和材の性能に関する一考察」,日本建築学会技術報告集,Vol.24,No.57,June 2018,pp.523-528.
2) 渡辺宗幸,岡田明也,齋藤俊克,出村克宣,「塩化物イオン固定化材混入ポリマーセメントモルタルの強さ及び塩化物イオン浸透性状」,コンクリート工学年次論文集,Vol.38,No.1,June 2016,pp.1527-1532.
3) 渡辺宗幸,齋藤俊克,出村克宣,「塩化物イオン固定化材混入ポリマーセメントモルタルの基礎的性質」,コンクリート工学年次論文集,Vol.37,No.1,June 2015,pp.1177-1182.
4) 渡辺宗幸,飯野将広,齋藤俊克,出村克宣,「新規な防せい性混和材を用いたポリマーセメントモルタルの基礎的性質」,コンクリート工学年次論文集,Vol.36,No.1,June 2014,pp.256-261.
5) 飯野将広,渡辺宗幸,齋藤俊克,出村克宣,「カルシウム系防せい剤を用いた鉄筋防せいペーストおよび断面修復モルタルの防せい効果」,日本建築学会技術報告集,Vol.19,No.42,June 2013,pp.403-408.
6) 飯野将広,渡辺宗幸,齋藤俊克,出村克宣,「異なる長さの棒鋼を埋め込んだ供試体の打継部の長さおよび比率がマクロセル腐食の発生に及ぼす影響」,コンクリート工学年次論文集,Vol.35,No.1,June 2013,pp.1105-1110.

【科学研究費補助金】
1)科学研究費助成事業(基盤研究C),(H27~29年度),研究代表者:出村克宣,研究分担者:齋藤俊克,研究課題名:マクロセル腐食の抑制効果に優れたRC構造物用断面修復材料及び工法の開発(課題番号:15K06171)


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